誰も
「誰も」は、ドラマ『エル・カポ』の一場面を描いており、主人公が自分の葬式を見つめている最中、一人のホームレスの女性に問いかけられる瞬間を捉えている。
この肖像は、寒色系で灰色がかった水彩と、グラファイトおよび木炭を組み合わせ、三角形の構図で構成されている。
本作には、通常とは異なる署名が用いられている。
作品解説
「誰も」は、ドラマ『エル・カポ』の一場面を捉えた作品であり、年老いた女性の浮浪者に問いかけられる瞬間を描いている。場面は、主人公であるカポが完全に没落した状態を示している。彼はすべてを失い、さらには自分のアイデンティティさえも失っている。死んだことにして、街の浮浪者たちの中に身を潜め、自らの葬式へと向かう。そこで一人の浮浪者が彼に「お前は誰だ」と問いかけ、彼は遠くに見える自分の棺を見つめながら「誰も」と答える。ここから作品名が由来している。
この「存在」の表象は、肉体としては存在しているが、アイデンティティを持たない状態であり、それを描くことが本作の芸術的意図を喚起している。この「誰も」という言葉は、カポ自身だけでなく、彼の置かれた現状、すなわち貧困をも指し示している。貧しい者は、社会や政府にとってしばしば不可視の存在となるからである。
作品の構成は、互いに対置された四つの三角形から成り、人物の顔をわずかに引き伸ばしている。寒色で灰色がかった色彩に、木炭とグラファイトを組み合わせることで、淡い雰囲気を生み出している。縁はあえて未完成のまま残され、筆致の方向や水彩の層が可視化されている。
※本作には、アーティストアンガスピルコ・ケによる特有の署名が用いられており、作品の技術的スタイルに基づいている。
作品情報
日付:2020年8月14日
サイズ:F8(46.5cm×39cm)
支持体:ワトソン社製コットン紙(日本製)
技法:水彩/グラファイト/木炭
重量:300g
モデル:マーロン・モレノ(シリーズ「エル・カポ」、2009年)
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